脱兎
晩秋の草刈り。
休耕地の草を刈り始めて1ヶ月、
いよいよ、最終日。
幾重にも倒伏する萱(かや)や水草、小木。
風向きを読みながら、
あるときは縦列に
あるときは横列に、
牧草のように刈り機で一気になぎ倒す。
やがて、
肉は躍り
腰は締まり
腕は野太刀の筋となる。
刈り納めとなるこの日、
何か飛び出した。
(オッ、うさぎ!)
見ると、
土手草に身を潜める黒い影。
その距離、約5メートル。
足音を消すため、
刈り機の音を“弱”に切り替え、
“刈り人”は“狩人”に脱皮する。
狩りの手法は二つ。
一つは、手づかみ
一つは、投げ網
網がない。
上着を脱いで、頭上に投げて抑えるか。
しかし、
獲物は野伏せりの陣に入り、
どんな微音も逃さない耳に集中している。
(よし、手づかみだ・・・)
呼吸を整え、
気を消す。
消して、風となる。
一歩、ニ歩、三歩、
(しめしめ、頭隠して尻隠さず・・)
しかし、
水路が邪魔だ。
勝負は、
水路をまたぐ瞬間、頭部を押さえること、
その距離、わずか50cm・・・
強風が来た。
(いまだ!)
こちらが跳ねた、と同時に、
ウサギも跳ねた。
尾っぽをかすめた手、
それを振り切ると、
空中に飛び、そのまま「脱兎」になった。
ベトコンの地下トンネルのように、
張り巡された巣穴の道。
さっき飛びだった黒鳥もそう、
ここは鳥獣たちの別荘。
子育てをし、
暮らしていたのだな。
梅の蕾が開くころ、
草は焼かれて灰になり、
肥えた土に薬草躍り、春を告げる。
キランソウ、スイバ、カキドウシ、ヨモギの狩が終わるころ、
水田は群草におおわれ、
新たないのちの宿になる。
美しい野生のめぐり合いー。
(さ、やるか)
ほどなく狩人は、
何事もなかったように、刈り人に戻った。
自然薬草園で育てた薬草酢の製造・販売|株式会社薬草酢本舗 芳山坊
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