春に繁茂した薬草田。

 

極上の春草はお役目を終え、
秋萌えの薬草へと衣替えする、草刈の季節。

 

轟音が響いたその日。

 

モグラは驚き
うさぎは走り
鳥は上空旋回
猪は前戦退却

 

次ぎ次になぎ倒され、
草地のじゅうたんになる、雑草。

 

滝のように噴き出す汗、汗、汗。

しかし、苦にはならない。

 

作業終了後、
一気に入る薬草湯船が、
オセロゲームで逆転する爽快さを贈ってくれるから。

 

だから、
五右衛門風呂に火をくべてから草場に行く。

 

半時後、
薬湯の煙は樹幹をぬって姿を現し、
なぜか渓流にそって流れ、
ちょっぴり華奢な龍の煙。

 

「よかな、あの煙・・・」

 

詩人の哲ちゃん、この風情を逃さない。

 

 汗流れて湯煙となり
 煙垂れて龍煙となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八月上旬。

 

枯れ草の炎上は、
迎え火となって天地の精霊を招く。

 

そしてそこから、
秋草のいのちが芽を吹く。

 

さあ、もう一息だ。